ラ ム レ ー ズ ン

前 だ け 向 い て ろ 

ヘッドホン買ったから行けへん

 

金曜日は男の子がお昼休みが終わってすぐ部活に行くので女の子デー

いつものように、金曜日を待ちわびていた仲良しのいつもの女の子2人と話していた

彼女たちの名前はカシュとライミ(仮名)

 

ライミは、お弁当だけでは足りず

昨日お母さんが買ってきてくれたというカツ巻き寿司のパックを片手にやってきた

ライミの恋人はこの高校を去年の春に卒業した男の子で

今は県外の大学に通っている

私も仲良くしていた子で、まさかこの2人が恋人同士になるなんてと

報告を受けたときは嬉しく思った

 

ライミはふがふが怒っている

どうしたん?はい、冷静にどうぞ、と言うとものすごい勢いで話し始めた

 

来月、彼が会いに来てくれることになっていたらしく

とても楽しみにしていたのだけれど

突然連絡が来て

先延ばしにしてほしいと言われたみたい

理由を聞くと、なんと

ヘッドホン買ったから行けへん、との答えが返ってきたとのこと

 

ヘッドホンって・・・私と会うよりヘッドホン?

どうしても欲しかったとのことで、つい買ってしまいお金が無くなったとのこと

 

ちなみに、そのヘッドホンなんぼしたん?

私がライミに尋ねると

間髪入れずに 5万!と言う

 

生活スタイルは人それぞれ、彼にとってはきっと

ヘッドホンが人生の重要な道具なのだろう

3人で、何度も5万、と繰り返す 

ライミに会えなくなった理由にもヘッドホンの値段にも

罪はないけど驚いた

 

シュカは、隣で笑い転げている

 

もういいよ、って言って電話切ってやった!

ライミはそれでもやっぱり楽しそうに笑っていた

腹立つ!もう遠距離無理かも!

でもicoさんに話したらすっきりした!と言ったところで

午後の授業開始5分前のチャイムが鳴って

始まるけんもう行かんと!と言うと

またね!ばいばーい!と階段を上がっていった

 

静かになった部屋で精算をして

午後からする仕事の段取りを考えながら

鍵を閉めて私も少し遅れて階段を上がる

 

この地方特有の冬空に

薄い頼りない水色がひさしぶりに見えて

それだけで嬉しくなった

 

大きな水たまりがたくさん出来たグラウンドで

野球部たちがきれいに列をなして

吸水作業を続けていた