ラ ム レ ー ズ ン

前 だ け 向 い て ろ 

最終回

寮の泊まりがあるけん、終わったらすぐに行くね

あの子たちにはそう言っていた

大事な初戦

本当はまるごと見たかった

 

終業式の日で、購買は閉鎖する

上司に呼ばれて言われた

私が生徒たちに甘いから、指導できないから

購買を稼働させる意味がないので閉鎖すると

 

悔しかった

2学期からは、近くにできたパン屋さんが

パンを売りに来ると言う

購買は鍵をかけて開かずの部屋になるそうだ

 

しかも、男子生徒と私が付き合っているという噂が

女子生徒から入ってきているから

そのような噂が流れるような

行動をしていることが問題であると言われた

 

私に真実を確認することもなく

その噂を、信じられてしまう

学校内で私が喫煙しているという噂も

かつて流された

私は1本の喫煙経験もない

寮から生徒たちの脱走を許したというものもあった

 

どれも真実じゃないのに

 

あの子たちには自分の言葉で伝えたかったから

自分が聞いた通りに

閉鎖の件を伝えた

女の子たちには、寮で伝えた

 

怒りの渦が巻き起こる

なんでいっつもicoちゃんなん

うちらにとってどういう場所か

居場所なんか

全然わかってないやん

 

icoのこと潰したいだけやん

強制的に閉店なんか

俺らとの距離作りたいだけやん

やったら事務まで俺ら毎日会いに行く

一緒のことや

俺らの気持ちやてある

 

やめんとってや

おりづらいやろうけどやめんとってや

俺らのことどれだけ愛してくれてるか

支えてくれてるか

俺らが学校に伝えるから

icoのこと守ったるから

 

絶対勝つから

長い夏にするから

絶対icoのこと笑顔にさせたるから甲子園一緒に行こ

明日俺ら待ってるから

 

彼らにはこう言った

その怒りや悔しさ、全部全部

バットにぶつけてほしい

寮の夜勤が終わったら絶対すぐ行く

絶対見に行く

 

後半には間に合うと思っていた

でも、駐車場が満車で引き返し

商業施設に停めてタクシーを呼んでもつかまらない

やっと来てくれたタクシーに乗ろうとしたとき

精算機の使い方がわからないと言う

おばあちゃんに話しかけられた

急いでいますなんて口が裂けても言えない

 

2台、タクシーを見送った

 

やっと乗ったタクシー

運転手さん、急いでくれてるのが分かった

抜け道いきます、と言って内緒で飛ばしてくれた

 

お礼を言って、やっとの思いで入場券を買ったとき

うちの学校のヒットが出たことを知らせる

ファンファーレが鳴り響いた

 

大勢の応援組に、ico~!と迎えられた

メガホンでico来たで~!と叫ぶ

ベンチから笑顔でハートを作ってくれる

15分しか、見られなかった

それでも、守備に打撃に

魅せてくれた

いたずらっこたちは躍動してた

 

最後の4分だけ、動画を回した

 

ベンチから走って飛び出していく

整列して、相手の学校にも頭を下げる

校歌を歌って

笑顔で手を振ってくれる姿を

 

試合が終わって、メンバーが出てくる

手には千羽鶴が握られていた

 

勝ったで、ico!

来てくれたんわかったで

色付きの服着てるからわかったんやで

ありがとう!

 

顧問のコーチともばったり会う

え、愛子さん寮やったのに!

あいつらよろこんどったでしょ!ありがとう!

と笑って手を振ってくれた

 

まだ、引退しないでね

こんなに青い空のした

まだまだ、終わらんでね

 

大好きだよ、みんなが